Quantcast
Channel: コースケの田舎主義
Viewing all articles
Browse latest Browse all 50

名産野菜の力不足と世代交代

$
0
0

東京出張のついでに鳥取県のアンテナショップに立ち寄りました。今年から新しく鳥取県と岡山県とが共同で「とっとり・おかやま新橋館」というアンテナショップを立ち上げ、新橋駅前の非常に良いロケーションに構えているのです。

 
とても素敵なお店で関係者の方々の努力に頭が下がるんですが、でもね、我らが鳥取県は商品が地味なんですよ。新橋駅前で眺めると、商品の地味さが際立ちます。
秋に並んでいたのは、白ネギ、シイタケ、長芋、ラッキョウ、梨に柿、・・・いやはや、なんとも地味なラインナップです。
(時期が違えば、松葉ガニとか大栄スイカとかは華のある商品が出てきます)
 
どれも美味しんですよ!我が家の毎日の食卓にも並んで、私も大好きです。
 
でも地味、う~む。 
TPPとか自由競争で最も打撃を受けそうなのが、こういうゾーンです。
強いブランド力やインパクトが無いので、外国産で何割も安い商品が出回ると、あっという間にシェアを奪われ値崩れします。
 
大変な問題だと思います。
地方の農業が崩れた場合、地域経済に大きな打撃があります。
食の安全も懸念されますね。国産野菜は高くても安全なんですが、価格と安全の競争になった場合に消費者は価格の方を重視することが多いことが、中国の鶏肉問題などでも証明されてきました。どんなにいい加減な食品でも「安いけど危険ですよ!」なんて言って売られることはないんですよ。安全は見えませんが値段が安いのは誰からも見えます。
だからTPPへの反対活動は当然に必要なんですが、反対していれば大丈夫とも言えません。
残念ながら、TPP参加が決まってしまう可能性は、低くありません。
そのときのために、海外と競争しても勝てるブランド野菜を今から開発するしかないのです。
 
 
でも、長年の名産品に代わるブランド野菜なんて、開発できるものでしょうか?
それについて、私は最近、ちょっとしたカルチャーショックがありました。 
鳥取県の西部の弓ヶ浜半島では「白ネギ」が名産です。
砂地の弓ヶ浜に合うのだそうです。
私が子供の頃から、弓ヶ浜といえば白ネギでした。こんな呼び方は今時は怒られるでしょうが、子どもの頃は「ネギヶ浜」なんて名づけたこともあります。
だから、ず~っと昔から弓ヶ浜は白ネギだと信じていたのですが、先日出版された「米子歴旅」という本で、米子の歴史に詳しい杉本良巳さんの文を読んで驚きました。
 
それによると、弓ヶ浜は18世紀初頭に米川用水が通ることで初めて稲作が始まり、18世紀後半にはサツマイモ栽培が始まったのだそうです。
その後、換金作物が良いということで綿作が中心に転換し、大阪市場でも「伯州綿」として知られるようになりました。
ところが、明治時代に外国産の綿が大量に入るようになります。
そこで転換したのが「養蚕」で、一面に桑畑が広がるようになりました。
しかし、戦後に化学繊維が発展ししたため、これもシェアを奪われます。
そこで3たび転換したのが「葉タバコ」なのです。昭和30年代のピークには2100ヘクタールまで広がったとか。
ところがまたまた問題発生、たばこによる健康被害でした。
ここでついに「白ネギ」の登場なのです。昭和終盤から平成にかけて、西日本最大の白ネギ産地になったのでした。
こうして見ると、18世紀から稲作・サツマイモ→綿作→桑畑→葉タバコ→白ネギと、長期安定の名産品はありません。成功した時代があっても、いつかはシェアを奪われる時代の変わり目があり、そのたびに新しい作物への転換に挑戦し成功してきた歴史があります。
 
いやはや、名産野菜の栽培がこんなに戦略的なものだとは。
きたるべきTPPに備えて、新しい時代の名産野菜への転換をすべき時なのかもしれません。

Viewing all articles
Browse latest Browse all 50

Trending Articles